Creep

私は長く罪を負っている。大きな罪を。神も許しては下さるまい。いや、許されるべきではないのだ。私は聖職者でありながら、幼い子どもを愛する類いの人間だ。それも性的な意味で。いつの頃からか、私はただ一人の子どもを愛しはじめていた。なにも知らない、純粋な子を。彼に対する汚らわしい欲求を抑えきれず、私は彼を傷つけてしまった。私は彼の無垢の信頼を汚した。彼は家庭環境も相まってか、成長していくにつれ、徐々に荒んでいった。私は彼に世界の汚らわしい一面を教えた一人なのだ。青年になった彼は私に言った。ペド野郎、と。いつも平気でへらへらしやがって、気色悪いと。仕方のないことだ。だが私は彼を愛することをやめられないでいる。毎日大量の煙草を吸い、時々酔いつぶれ、そうして自分を傷つける彼に私は心を痛めている。ピアスの穴もきっと彼の心の傷のぶんだけあるのだ。彼がそうなってしまった一つの要因を作ったからこそ、私は心苦しくなる。今でも。彼は今地下街で暮らしている。あまり治安はよくない。密輸品とありとあらゆる海賊版が出まわり、時にはドラックさえ飛び交う。そんな場所にいては、ますます彼は自ら身を堕としていくだろう。人を救う資格などないことは充分に分かっているが、私は彼を救いたいのだ。私はたびたび彼のもとを訪れ、話を聞いている。神父の格好のまま。彼の寝泊まりしているホテルにはおよそそぐわない格好であるとは思うが、これが私の贖罪だ。常に罪を犯しつづけているのだから、贖罪もまた続けなくてはならない。彼と私、2人の懺悔の場なのだ。だが正直に言うと、私はこの状況を嬉しく思っている。彼と話せる唯一の機会でもあるからだ。何より、そんな時彼は不思議と私を拒まないのだ。
  結局のところ、私は卑しい感情を捨てきれていないのだろう。顔も知らぬうちから、ある男に対して、私は身勝手にも腹を立てていた。クラウスが行きつけの喫茶店でエドという男と故意にしており、絶大な信頼を寄せていることが分かったからだった。自ら無垢な信頼を汚したというのに、それを勝ち取る者が現れると、私は苛立つのである。

  例の男とは"地下街"にある、ダイナーで偶然出くわしたのだった。いつものようにクラウスを探して訪れた時だった。ホテルにいなければ、たいていそこにいるのである。
  男は私の姿を一瞥すると目を丸くして吹き出した。温厚なダイナーの主人が怒るほど辺りにコーヒーをまき散らし、おいおい、神父さまがこんなところに一体なんの御用ですか?とあざ笑った。エドは"地下街"の住人らしく、型くずれして糸のほつれたジャンパーと傷んだジーンズという服装で、ピアスもあの子と、クラウスと同じぐらい大量につけていた。
  そこでふと気がついた。1つだけ、クラウスと同じ場所に全く同じピアスがあることに。私は我を忘れて彼の耳をつかんだ。あいにく私はピアスの取り方などろくに知らない。ただ引っ張っているだけの格好になった。先ほどまでしかめっ面をしていた隣のクラウスは目を丸くしていた。エドはしわがれ声で何しやがる!と怒鳴って私を突き飛ばした。鍛えなどしていない枯れ木のような身体は簡単に崩れ落ちた。背中に当たるタイル張りの床が痛かった。店には主人を含めて4人しかおらず、店の主人はもう騒ぎを止めるつもりはないようだった。彼の眼鏡の奥にはなんの感情も見てとれなかった。私は店を出るしかなかった。私が埃を払って立ち上がる頃には、2人とも平然とつけあわせのサラダを食べはじめた。私がその場に存在していないかのように。その日私は自分が亡霊になったような気がした。

Radiohead - Creep