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  刃がずぶずぶと腹に刺さっていく。意識が飛びそうになりながら、言った。なんで。いつもしていることだろう。奴はそう応える。おれは抱きしめられていた。頬にキスをされる。朧げに笑っているのが見える。きっと向こうも相当痛いはずだ。おれは奴を刺した。それから奴もおれを刺したんだ。口から血がたれてくる。向こうも同じだ。血が喉の奥にせり上がってくる。咳き込む。点々と赤黒い染みが地面にできる。酸化し始める鉄の臭いがする。息を吸う前に奴がおれの口を塞ぐ。自分の口で。まるで、そう、バイクのマフラーを塞ぐみたいだった。吸気も排気もできない。また息が苦しくなる。奴は口を離す。おれはもう動けない。さすがに甘くはないな、と奴が呟くので、声を振り絞り、当たり前だ、と返す。大の男ひとり抱えたまま奴は草がぼうぼうの場所に腰を下ろす。そのまま横になる。いつまでもおれを離そうとしない。離せよなんて言う気力はもうなかった。陽の光が暖かい。草むらも緩い。血と土と青くさい草の匂いがする。正面は風で少しなびく濁った金色の髪とこげ茶色の目だ。奴の前ってのは癪だ、でもこのまま眠ってもいいかもしれない。そんな気がする。だけど奴はそれを許さなかった。また息を飲み込まれる。生温かい生きものが口の中を動きまわる。自分の舌になんどもそいつが絡みつく。さっきから口の中は血と唾がまざりあってぬめぬめしている。吐き気がする。どっちのかは分かりゃしない。そろそろ限界だった。息もできないし、血は止まらない。とうとう、目の前が真っ暗になった。

こんな感じの夢をみた